ヴァージンの不埒な欲望
「本当に楽しそうですね!ブルーインパルス、テレビで見た事があります。実際に見たら、もっとカッコいいんでしょうね!」
「うん!すっげえカッコいいし、すっげえきれいなんだ。で、見た目はもちろんだけど、音!音の迫力は、その場にいるから実感できると思うんだ!よかったら、愛美ちゃんも……あっ、いや、なんでもない。ごめんね、一人ではしゃいで」
子どもっぽい口調で、興奮気味に話していた拓夢さんの雰囲気が、いつもの落ち着いたものに戻った。
拓夢さん、何を言いかけたんだろう?
話しているうちに、駐車場に着いていた。拓夢さんが車のロックを解除して「どうぞ」と、助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとうございます」と言って、車に乗り込む。
「お弁当、楽しみにしてたんだ。どこで食べようか?」
拓夢さんの問いに、その重大事項が遠くに追いやられていた私は、一気に緊張が増す。
「その、運動会などに持っていくような、段々のお重のお弁当じゃないので、どこでも大丈夫です。なんだったら、このまま車の中とかでもオッケーです!」
緊張を隠すように俯きながら、ちょっと強めに言ってしまった。
「じゃあ、一人ずつのお弁当?」
「はい!二段のお弁当箱です!」
「そういうの、高校生の時以来かも。ちょっと、懐かしいね」