ヴァージンの不埒な欲望
「おお~!彩りが、きれいだね」
私に何かを返す余裕は、なくなってしまった。固唾を呑んで、拓夢さんの次の言葉を待つ。
「リクエストした卵焼きから、いただくね。ねぎと、何が入ってるんだろ。食べてみればわかるかな?」
私に説明するように話す拓夢さん。
「うん、うまい!この赤いのは……あっ、かにかまでしょ!」
私はようやく、視線を上げて拓夢さんを見た。拓夢さんは私の答えを待つように、小首を傾げてこちらを見ている。
拓夢さん、そういう仕草も可愛くてキュンときます。
「はい、正解!かにかまです」
「やった!」拓夢さんはくしゃっと笑った後、小松菜とツナの和え物を口に入れた。
「うん!ツナがいい味出してる!愛美ちゃん、俺が言うのもあれだけど、お弁当、食べようよ。どれもおいしいから!」
拓夢さんの言葉にはっとして、私も「いただきます」と手を合わせてから、お弁当箱を開いた。
「召し上がれ」と拓夢さんに微笑まれて、さっきまでの自分の余裕のなさが、急に恥ずかしくなってきた。熱くなっている頬を、そっと左手で押さえた。
先日から思っていたけど、拓夢さんはわりと豪快に食べる人だ。「うまい!」と言いながら、「これは、どう作るの?」なんて質問や感想を挟みながら、あっという間にお弁当の中身が、拓夢さんの口の中に吸い込まれていった。