ヴァージンの不埒な欲望
話しているうちに、私の緊張もどんどん解けていった。私の卵焼きと、人参といんげんの肉巻きを一つづつ拓夢さんにあげて、私達のお弁当箱はきれいに空っぽとなった。
「愛美ちゃん、ごちそうさま!どれも本当においしかったよ。次のお弁当が、楽しみだ!」
「お粗末様でした。きれいに食べてくださって、ありがとうございます!えっと、次も、がんばり、ます」
あんなに不安で後悔したのに、単純な私は拓夢さんが喜んでくれるならと、なんの躊躇もなく、再びお弁当作りを了承する。
今回は和食中心だったから、洋食にしようかな。なんて、次のお弁当作りの事で、すぐに頭の中がいっぱいになるのだろう。
水筒で持参したお茶を二人で飲みながら、図書館で読んでいた本の話をした。拓夢さんも、たまに図書館を利用するそうだ。
これまで読んだ本の話の中で、やはり同じ作家さんが好きだとわかった。読んだ本の感想を言い合うのは、とても楽しかった。そんな見方があるんだと、新鮮な驚きも感じた。
『本を読む』という行為は、ずっと一人でするものだと思っていた。その時間を誰かと共有でき、楽しむ事ができるなんて。新たな発見だった。
しばらく話をした後、翌週の予定を拓夢さんに訊かれた。私に、特別な予定があるはずもなく。
「来週は、映画を観に行こうよ!」
拓夢さんの提案を、私はもちろん、二つ返事で了承する。