ヴァージンの不埒な欲望
「愛美ちゃん、ウサギりんご、可愛いわね」
向かいの席の二宮さんが、そう声をかけて微笑んだ。恥ずかしくて、私の頬は熱を持った。
そういう、事だと思う。明らかにこれまでと様子の違う私。最近なんとなくテンションが高めなのも、気付かれているはずだ。
そんな私の事を、みんなで静かに見守ろう。誰かの提案なのか、暗黙の了解なのかはわからないが、そういう事になったんだろう。
「ありがとうございます!」
ちょっと声を張って言ってから、小さく頭を下げた。私の周りの空気が、ふわっと柔らかくなった。
すてきな先輩達に囲まれて、私は本当に幸せだ。
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今回の待ち合わせは、九時三十分。映画の上映時間に合わせて、その時間になった。
やっぱり、待ち合わせ時間の二十分前には待ち合わせ場所に到着してしまう私。十分前には、颯爽と現れる拓夢さん。
ドキドキしながらも、スルッと拓夢さんの車の助手席に座った、つもり。
今日行く映画館は私がいつも行っている、ショッピングモール内にある映画館。慣れている場所だけど拓夢さんと一緒だと思うだけで、初めて行く場所のように緊張する。
誰かと一緒に映画を観に行くのも、大学生の時以来だ。あの時は、大学の友人と二人で行った。仲のいいグループの中の一人だった。