ヴァージンの不埒な欲望
「○○くん、チョコとか甘い物が苦手なの。さすが、クールって感じでしょ?」
“クール”て事と“甘い物が苦手”は、直接結びつかないと思うけど。大人の雰囲気をもった渋い男の人が、生クリームたっぷりのパンケーキをおいしそうに食べていたら、私は可愛いって思う。いわゆる『ギャップ萌え』てやつかしら。
友人の熱い語りに曖昧に頷きながら、頭の中では、そんな事を思っていた。
結局友人からは、はっきりとした映画の感想を聞く事もなく別れた。私は友人の話に、うまく乗っかる事も変える事もできなかった。
よくわからない疲れを感じながら、映画を観た後の感動が半減してしまったようだった。
それから私は、映画は一人で観に行くようになったのだ。
今日観る映画は、拓夢さんが昨日ネット予約をしてくれたので、すんなりとチケットを買えた。移動する拓夢さんに、思わず声をかけた。
「拓夢さん!あの、私、ずっと気になっていて」
「うん。愛美ちゃん、何が気になっているの?」
拓夢さんが立ち止まり、向かい合うようにして立つ。
「その、このタイミングで言うのも、どうかと思うんですけど」
「うん」
「ずっと、映画館の中に漂う、甘い匂いが気になっていて。キャラメルポップコーン、二人で食べませんかっ!?」
「……えっ?」