ヴァージンの不埒な欲望
小さく息を吐いた後、一気に言った私に、拓夢さんは目を丸くして、一瞬固まった。
「愛美ちゃんは、キャラメルポップコーンを食べながら、映画が観たいんだ?」
「はい!朝ご飯を食べたばかりで、お腹はすいていないと思いますが。ずっと、キャラメルポップコーンを食べたいと思っていました!」
拓夢さんを見つめながら、コクコクと頷きながら言った。
映画を観に来るたび、このキャラメルポップコーンの甘い匂いに誘われていた。が、食事をした直後に来る事がほとんどなので、今まで食べていなかった。
いや、一人でキャラメルポップコーンを食べるのが恥ずかしかった。『一人でキャラメルポップコーンを食べながら、一人で映画を観る自分』が思い浮かんだ時、その姿が妙に滑稽に思えたからだ。
拓夢さんは軽く吹き出した後、眉尻を下げて微笑みながら言った。
「思い詰めたような雰囲気の愛美ちゃんに、何を言われるかと焦ったよ。いいね、キャラメルポップコーン。飲み物も一緒に買おうか」
「はい!」
私は満面の笑みで答えた。
『キャラメルポップコーンと飲み物を買う』という行為が、こんなに楽しいものだと思わなかった。拓夢さんと一緒だったから、そう思えたのかな。
大きめの紙カップに入ったキャラメルポップコーンと、拓夢さんのジンジャーエール、私のホットミルクティーが乗せられた館内専用のトレイを受け取った。
それだけで、ワクワクする。