ヴァージンの不埒な欲望

今回観る映画は、恐竜が出てくるシリーズ物の映画。最初の作品は、二十年以上前に公開された。今回のシリーズ最新作は、五作目となる。

先週ここに来て今上映されている映画を確認しながら、どの映画を観るか拓夢さんと相談した。

拓夢さんも私もシリーズ全作を観ていて、印象も悪くなかったので、この作品に決めた。うん、これが拓夢さんと二人で観るには、一番無難な作品だと思う。ラブストーリーなんかは、絶対に、恥ずかしくて観られないから。

上映時間の二時間ちょっと、恐竜のリアルさに息を呑んだり、驚いたり。次々と起こる出来事にハラハラして、ドキドキして。館内に「ありがとうございました」のアナウンスが流れて明るくなって、ようやく私は肩の力を抜いて、ほぅと息を吐いた。

「愛美ちゃん、行こうか」と拓夢さんに声をかけられ、「はい」と小さく頷いて席を立った。

ポップコーンや飲み物のカップやトレイを片付ける。「ちょっと座ろうか?」と拓夢さんに促されて、映画館のロビーのソファーに二人で並んで座った。

「ずっと気になっていたキャラメルポップコーン、どうだった?」

「はい!キャラメルの甘さがいい感じでした。また食べたいです!」

満面の笑みで答えた私に、「うん、おいしかったね」と拓夢さんも微笑みながら言った。

「やっぱり、愛美ちゃんの集中力はすごいね。今日も、映画を観る愛美ちゃんの表情に見入っちゃったよ」


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