ヴァージンの不埒な欲望
拓夢さんは楽しそうに、またもや爆弾発言を投下してきた。
さらに火照りを増した頬を右手で押さえながら、「拓夢さんはペット感覚で見ているだけ」と、心の中で言い聞かせる。
「今回も、恐竜の迫力は凄かったですね!」
さりげなく映画の話へと変えていく。映画を観ながら、何度か拓夢さんと顔を見合わせた事があった。同じ場面(シーン)で驚いたり、笑ったり。拓夢さんと同じ気持ちを共有するだけで、さらに映画がおもしろく感じられた。
映画に夢中になりながらポップコーンに手を伸ばし、指先が拓夢さんの指先と触れあった。
「っ!!」
声にならない悲鳴を上げて慌てて手を引っ込め、反対の手で、ギュッ!と触れあった指先を握った。
全く心の準備がなかったから、ちょっと不自然な態度をとってしまったかも。不安になりながら、そっと拓夢さんの方を見た。
「ごめんね」囁くように言った拓夢さんは、すぐに視線を前のスクリーンに移した。
よかった。何とも思ってないようだ。「こちらこそ、すみません」私も囁くように応え、通常より早い鼓動の胸を、右手で押さえた。
それからしばらくの間は、ポップコーンに手を伸ばす前に確認をしていた。が、やはりそれもすぐに忘れて、映画に夢中になっていた。それでも、指先が触れあう事はもうなかった。