ヴァージンの不埒な欲望
雨の公園の駐車場に停まっている車は、予想通り少なかった。逆に、数台でも停まっている事が意外だった。みんなが、お弁当を食べに来た訳じゃないだろうし。
降り続く雨をずっと見ていると、不思議な気持ちになってきた。拓夢さんと私のいるこの空間が雨の薄いベールで覆われていて、現実の世界から、ほんの少しだけ距離が置かれているような。
雨のベールは、周囲の喧騒も遠ざけてくれているようで。車の中という日常的な閉ざされた空間が、とても特別な場所のように感じた。
この世界に二人だけになってしまったようで、嬉しいような、せつないような……
そんな私の、ちょっと感傷的な想いとは関係なく、私達はお腹が空いていた。
今回は、拓夢さんからのリクエストはなかった。「おぉ、ハンバーグ!」という感嘆の声を上げた後、まずは煮込みハンバーグを口にした。「おいしい!」の言葉の後、前回と同様に拓夢さんは豪快にお弁当を食べ進めた。
ウサギりんごにも「可愛い」と、ちゃんと反応してくれた。その事も嬉しかった。
今はお茶を飲みながら、とりとめのない話をしていた。車内にお弁当の匂いが充満してしまったので、運転席と助手席の窓を三センチ程開けている。その隙間から聞こえる雨の音が、私にちゃんと現実世界を教えてくれる。
「先週の図書館、今日の映画館。私が普段からよく行く場所に、あえて二人で行ったんですよね」