ヴァージンの不埒な欲望

私は拓夢さんに、お礼を言いたかった。図書館も映画館も一人でも楽しめる場所だが、誰かと一緒でも楽しめる場所だ。そんな当たり前のような事に、気付いていなかった。私の中にあった思い込みを、拓夢さんが見事に払拭してくれた。

「愛美ちゃんに『変わろう』と提案をした。その為のレッスンをするから、全部受け入れてほしいと言ったね。愛美ちゃんは戸惑いながらも、ちゃんと受け入れて変わってくれた」

拓夢さんは、私を見つめながら微笑んだ。頬が熱を持ったまま、拓夢さんの視線を受けとめた。

「確かに愛美ちゃんは変わって、以前(まえ)よりも、さらにすてきな女の子になった。でもそれは、元々愛美ちゃんの中にあったものだから。少しだけ、やり方を変えたり、見方を変えただけだ」

運転席から拓夢さんの左手が伸びてきて、私の右頬を包んだ。その手には心地よい温もりがあって、拓夢さんの心の温かさだと感じた。控えめに、その手に頬を寄せた。

「俺の生徒は、優秀だね。ちゃんと俺の意図を理解して、レッスンを受けてくれていた。何か、ご褒美をあげなきゃね」

『ご褒美!?』その言葉に、私の中のスイッチが入りかける。乙女系ノベルでは、“ご褒美”と“お仕置き”という言葉の後には、甘く危険な展開が待っている事が多い。

私にも、ご褒美的展開が~!?なんて、さらに深い妄想に入りかけた時、拓夢さんの温もりが私の頬から離れていき、ハッと現実に戻る。


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