ヴァージンの不埒な欲望
いつもなら、すぐに本の中の世界に入り込めるのに。
ここ最近、日曜日には拓夢さんに会っていた。が、今日も明日も拓夢さんと会えない。
お弁当を食べ終わった後、車で移動しながら通りすがりのカフェに入って、コーヒーとシフォンケーキをいただいた。その時の拓夢さんは、もういつも通りの拓夢さんで。なんとなくホッとした。
図書館、映画と、早めに次の行き先が決まっていた。けれど、カフェを出て待ち合わせ場所の公園の駐車場まで送ってもらい、次の約束を何もせずに別れてしまった。
よくわからない不安を感じていた火曜日。拓夢さんから『週末は予定がある』とメッセージが届いた。悪い予感は、なぜかよく当たる。
一人で過ごす休日を、寂しいと感じてしまっている。一人だと、何もする気になれない。かろうじて『読書』という、いつも自分が一人でしている行為を思い出してやってみたのに、結果は予想以上にダメだった。
寂しい、だけじゃない。私は先日の拓夢さんの横顔に、不安を感じている。
まだ名前も知らなかった、拓夢さんのジャケットの裾を掴んで引き留めたあの日から、拓夢さんはずっと私と向き合ってくれていた。
最初は当然、警戒されながらだった。それでも拓夢さんは真っ直ぐに私の事を見て、言葉を聞き、拓夢さんの言葉を伝えてくれた。
でも、あの日の拓夢さんは。一人で何かと向き合っていた。