ヴァージンの不埒な欲望

私、どうしてあんな事ができたのだろう。今日、初めて話す人だったのに。

何の計画もなく、不意に身体が動いてしまった。それでも、自分の想っている事は、かなり伝えられたと思う。

姿を見ても間近で顔を見ても、ドキドキは止められない。ついうっとりと見惚れてしまう。

そんな相手に、どうしてあんな風に話せたのだろう?

包容力……その人から、包容力のようなものを感じた。私が何を言っても何をしても、その人ならきっと受け止めてくれるはずだと。

私の勝手な思い込みで、その人にとってはかなり迷惑な話だ。

半分、せめて三分の一でも。その人に伝えられたように、自分の想いを父に伝える事ができたのなら。

私の未来は、何か変わるのだろうか。

イヤ!私は、ギュッと目を閉じた。

それがどうしてもできないと思ったから、あんな事をしたのだ。

私が、三~四才の頃の記憶。小さい頃の記憶だから、本当にそれを見たのかも確実ではないのだが。昨日の事のように、やけに鮮明に残っている。

リビングのソファーに座る父の後ろ姿。背中が、微かに震えているようにも見える。簡単に声をかけられる雰囲気ではない。

「愛美っ!どうして……」

怒りなのか、悲しみなのか。強い感情のこもった声で私の名前呼んだ後、ドン!とテーブルを握り拳で叩いた。


< 17 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop