ヴァージンの不埒な欲望
私、どうしてあんな事ができたのだろう。今日、初めて話す人だったのに。
何の計画もなく、不意に身体が動いてしまった。それでも、自分の想っている事は、かなり伝えられたと思う。
姿を見ても間近で顔を見ても、ドキドキは止められない。ついうっとりと見惚れてしまう。
そんな相手に、どうしてあんな風に話せたのだろう?
包容力……その人から、包容力のようなものを感じた。私が何を言っても何をしても、その人ならきっと受け止めてくれるはずだと。
私の勝手な思い込みで、その人にとってはかなり迷惑な話だ。
半分、せめて三分の一でも。その人に伝えられたように、自分の想いを父に伝える事ができたのなら。
私の未来は、何か変わるのだろうか。
イヤ!私は、ギュッと目を閉じた。
それがどうしてもできないと思ったから、あんな事をしたのだ。
私が、三~四才の頃の記憶。小さい頃の記憶だから、本当にそれを見たのかも確実ではないのだが。昨日の事のように、やけに鮮明に残っている。
リビングのソファーに座る父の後ろ姿。背中が、微かに震えているようにも見える。簡単に声をかけられる雰囲気ではない。
「愛美っ!どうして……」
怒りなのか、悲しみなのか。強い感情のこもった声で私の名前呼んだ後、ドン!とテーブルを握り拳で叩いた。