ヴァージンの不埒な欲望
四才年上の兄は、私と対照的だ。
勉強もスポーツも、どちらもよくできる。面倒見がよくて、兄の周りに自然と人が集まる。まるで太陽のような人だと思う。
身体だって、学生時代ラグビーをしていた事もあって、しっかりと筋肉がついている。身長も一七七センチあるから大きい方だ。一言で言えば『ガタイがいい』。
“イケメン”とは言い難い。ただ濃い眉と、意思の強そうな瞳には、兄の性格がよくあらわれていて、なんとなく引き込まれる。
両親、兄とも同じ大学の教育学部を卒業し、教師をしている。現在父は校長、母は教頭となっている。
私も当然のように、そこを目指したのだが。「かなりのがんばりが必要」という担任の言葉に、父はあっさりと県内の女子大を勧めてきた。
その前の高校受験の時も、兄の卒業した進学校ではなく、近くの女子高を勧められた。
男の人が苦手な私にとって、高校・大学の七年間はわりと平和な時間だった。高校では、唯一の親友 福田 萌(ふくだもえ)にも出会えたし。
でも、高校・大学受験をひかえていたその時は、父に見限られたような気がして寂しかった。いや、最初から期待なんてされていないのだけれど。
母や兄からの愛情は感じている。
でも、この家で私だけが“異質”なのだ。華麗な白鳥の群れの中に、本当のみにくいアヒルの子が混ざってしまったようだ。