ヴァージンの不埒な欲望
伝える想い
迎えた日曜日、私はその人に告げられた午後三時よりも、三十分以上前にあの珈琲館に到着していた。
「いらっしゃいませ!」
水曜日の夜と同じ、ベルの音とマスターの柔らかな笑顔に迎えられた。
「こんにちは」
ペコリと頭を下げると「空いてるお席にどうぞ」と先日と同じように言われた。
日曜日のティータイム、手前のテーブル席も奥のボックス席もほぼ満席に見えた。
マスターの前のカウンター席が数席と、たまたま空いていた一番奥のボックス席に、ジワッと喜びを感じる。
先日と同じように、出入口の扉に背を向けて座る。
出入口が見えると誰かがお店に入って来るたびに、どうしても期待して見てしまうから。
マスターがお水とおしぼりを私の前に置いた時、先日と同じブレンドを注文した。
少ししてテーブルに置かれたコーヒーカップに、ミルクを入れてクルクルとかき混ぜる。
コーヒーの香ばしい香りをゆっくりと吸い込みながら、コーヒーを味わった。
水曜日の夜から今日まで、自分のしでかした事が恥ずかしくて、一人悶えていた。
でも、不思議と後悔はなかった。あの夜がその人と会えた最後になっても、自分の想いがきちんと(と言えるかどうかはわからないが)伝えられた事に、私はどこか満足していた。
幼い頃から、からかわれたり、苛められる事が多かった。