ヴァージンの不埒な欲望
「愛美ちゃん」
拓夢さんが、静かに私の名前を呼んだ。拓夢さんに呼ばれただけで、私の名前が特別な響きを持ったようで「はい」と応えた声が、わずかに震えた。
「愛美ちゃんの名前は、確かに可愛い名前だ。でも、全然名前負けだなんて思わないよ。愛美ちゃん、俺と約束して。これからは『私なんか』なんて言わない事」
私は、ハッと息を呑んだ。
「俺が愛美ちゃんにするレッスンは、全部受け入れてほしい。もし反論がある時は、ちゃんと愛美ちゃんの言葉で説明して俺を納得させて。いい?」
私の瞳を真っ直ぐに見つめ、静かに紡がれる拓夢さんの言葉には、有無を言わせぬ説得力があった。
「はい」
拓夢さんを見つめながら大きく頷くと、クシャッと拓夢さんが笑った。それまでのきれいな表情と違う、子どものような屈託のない笑顔だった。
その笑顔に、キュッ!と心臓を掴まれる。
「よしっ!愛美ちゃん、もっと可愛くなろうね!」
それから拓夢さんに訊かれるまま、いろんな事を話した。家族や友人の事、子どもの頃の事、好きな物・苦手な物等々。
拓夢さんは、話上手なうえに聞き上手だ。私の何の面白味もない話を、表情豊かに聞いてくれて、いろんなエピソードを引き出してくれる。
萌とも、こんなにおしゃべりした事ないかも!て思うくらい、自分の事を話していた。
私ってば、話上手だったのかしら?