ヴァージンの不埒な欲望

意外だったのが、拓夢さんが隣県の出身だった事。洗練された雰囲気から、地元の人ではないと思っていたけれど。

私が住んでいるのは地方都市で、様々な産業がそれなりに発展している。もちろん東京・大阪程ではないが、この地に本社を置いている有名企業もある。

が、隣県はどちらかと言うと、農業が盛んな県だと私は認識している。

大学で仲良くなった友達に、隣県出身の子がいた。「海に山。豊かな自然は自慢できるけどね」と、苦笑しながら言った。

大学の卒業後も、地元に戻ってもなかなか思うような就職先がないと、彼女は関西の企業に就職した。

東京とか大阪とか、絶対ここよりも都会の出身だと思っていた。

でもその事で、少しだけ拓夢さんに親近感が湧いた。

AKパートナーズには他に、私と同年代の社員が二人いた。男性・女性一人ずつ。

「アナ、リスト?」

その二人の名前の前には、そう記されていた。拓夢さん達の『コンサルタント』とは違うのだろうか?

そういえばテレビのコメンテーターにも、そういう肩書きの人がいたような、いなかったような。

ダークカラーのスーツをキリッと着こなした『アナリスト』の二人は、同年代なのにとても落ち着いていて知的に見えた。

拓夢さんの出身地を知って親近感が湧いていたのに、やっぱり私なんかと拓夢さんでは、全然住む世界が違う気がする。

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