ヴァージンの不埒な欲望

「『私なんか』て、思っちゃうよ~」

肩を落として溜め息をつく。改めて拓夢さんの経歴を知って、拓夢さんが別世界の人に見えた。

そんな人が、どうして私なんかに構うの?疑問と戸惑いで、頭の中がいっぱいになってしまう。

私は、たった一人の親友に助けを求める事にした。



*****



「・・・」

目を丸くして口をあんぐりと開けた、私のたった一人の親友、萌。

萌にこんな顔をさせているのは、間違いなく私なんだけど。

「萌、どう、思う?」

何も言ってくれない萌に不安になり、上目遣いになりながら声をかけてみる。

「『どう思う?』て、どの事に?て言うか、何からツッコめばいいのか、いろいろありすぎて、わからないんですけどっ!?」

「ツッコめば」なんて。らしくないセリフに、 萌ってば、お笑い芸人みたい!なんて考えながら小首を傾げてみれば、ギロリと眼鏡の奥の丸い瞳に睨まれた。

「はい、ごめんなさい」

私は、萌の前で一回り小さくなった。

──ここは、萌お気に入りの喫茶店。

四十代くらいのご夫婦が営んでいて、どこか懐かしさを感じるメニューと、壁一面の本棚に、ギッシリと並べられたマンガ本が人気をよんでいる。

昨日、『相談がある』と萌にメッセージを送った。週の始まり月曜日だというのに、萌はすぐに『会おう』と返してくれた。

そして、この萌のお気に入りの喫茶店で、仕事が終わった後に待ち合わせをしたのだ。

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