ヴァージンの不埒な欲望
二年くらい前から、書店で見かける拓夢さんに憧れていた事から昨日の事まで、全部を萌に話したつもり。
拓夢さんが私に提案してくれた、私が変わる為の『レッスン』。一体どんな事をするのか、拓夢さんからは何も聞いていない。
そもそも、どうして拓夢さんのような『眉目秀麗』、『頭脳明晰』な人が、私なん……私のような地味な子を気にかけてくれるのか?
拓夢さんにとって、何か利点があるのだろうか?
『自分と拓夢さんが釣り合わない』
そんな始めからわかりきった事を、今さらグルグルと考えて不安になっている。
ナポリタンスパゲティーをフォークに巻きつけたまま、お皿に置いた萌。
グラスのお水を一口、コクリと飲んだ。
私も、オムライスを掬おうとしていたスプーンを、静かに皿の上に置いた。
「まずは最初に言わせて。愛美ってば、好きな人がいたのに、ずっと私に黙っていたなんて……かなりショックだよ」
萌が眉をハの字にして、私を見つめながら言った。最後の部分は、萌の声が少し震えているように聞こえ、私は慌てた。
「そうじゃないの、萌!『好き』なんてそんなはっきりした想いじゃなくて……『憧れ』……そう!小説の中の伯爵様に『ステキ!』てときめくくらいの、そんな淡い……」