ヴァージンの不埒な欲望

二年くらい前から、書店で見かける拓夢さんに憧れていた事から昨日の事まで、全部を萌に話したつもり。

拓夢さんが私に提案してくれた、私が変わる為の『レッスン』。一体どんな事をするのか、拓夢さんからは何も聞いていない。

そもそも、どうして拓夢さんのような『眉目秀麗』、『頭脳明晰』な人が、私なん……私のような地味な子を気にかけてくれるのか?

拓夢さんにとって、何か利点があるのだろうか?

『自分と拓夢さんが釣り合わない』

そんな始めからわかりきった事を、今さらグルグルと考えて不安になっている。

ナポリタンスパゲティーをフォークに巻きつけたまま、お皿に置いた萌。

グラスのお水を一口、コクリと飲んだ。

私も、オムライスを掬おうとしていたスプーンを、静かに皿の上に置いた。

「まずは最初に言わせて。愛美ってば、好きな人がいたのに、ずっと私に黙っていたなんて……かなりショックだよ」

萌が眉をハの字にして、私を見つめながら言った。最後の部分は、萌の声が少し震えているように聞こえ、私は慌てた。

「そうじゃないの、萌!『好き』なんてそんなはっきりした想いじゃなくて……『憧れ』……そう!小説の中の伯爵様に『ステキ!』てときめくくらいの、そんな淡い……」

< 46 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop