ヴァージンの不埒な欲望
「ねぇ、愛美」
すっかり物思いに耽っていた私は、萌の呼びかけで現実に戻る。
真剣な顔で私を見つめる萌を、私も見つめ返す。
「私達みたいな特に取り柄もないような地味子が、安西さんみたいなハイスペック男子とお近付きになれちゃうなんて……一生に一度の事だと思わない?」
悪戯っぽく笑った萌に、私はコクコクと頷いた。
「だったらさ、そんな夢みたいな時間、思いっきり楽しもうよ!」
テーブルの上に身を乗り出すようにして、力強く言い切った萌。目を見開いて、私は萌の言葉を繰り返した。
「楽しむ……?」
「そう!レッスンが何をするのかは、想像つかないけど。もう開き直って、安西さんと一緒にいられる時間を楽しんじゃおう!」
明るい笑顔を湛えた萌の前向きな言葉に、フラフラと低空飛行を続けていた私の気持ちが、グイッ!と一気に急上昇した。
「そう……だよね。こんなチャンス、一生のうちに、もうないよね……」
間近で見た拓夢さんのきれいな笑顔を思い浮かべながら、そんな時間を、これからも続けたいと思った。
拓夢さんの本心はわからない。「どうして?」という疑問も消えない。
でも……
不安とか羞恥心とか、そんな重い鎖を引きずりながらも、あの時、私は拓夢さんの背中を追いかけた。