ヴァージンの不埒な欲望
変わる、変える

萌から勇気をもらって別れた、月曜日の夜九時前。拓夢さんから、メッセージが届いた。

『こんばんは。用事がなくても、メッセージを送ってもいい?』

『こんばんは!はい、嬉しいです』

『よかった!じゃあ、またね。おやすみ』

私は、月のイラストの『おやすみ』スタンプを送った。既読がすぐについたので、しばらくスマホを見つめていたが、沈黙したままだった。

「おやすみなさい」

私は静かなスマホに、そっと囁いた。


拓夢さんからは一日に二~三回、メッセージが届くようになった。「おはよう」、「おやすみ」の挨拶程度のものや、「お昼に食べたラーメンがおいしかった!」、「虹が出ていた!」なんて、時には写真付きで届く事もあった。

私も、それに合わせたような短いメッセージを返した。「おやすみなさい」、「私も見ました!」なんて。

そんな短いやり取りだけど、毎日繰り返されるスマホ上での会話は、私に拓夢さんの事を身近に感じさせてくれた。

そして、あっと言う間に一週間が過ぎ、再び迎えた日曜日。今日は、拓夢さんと待ち合わせをしている。

お互いに予定がなかったら毎週末に一度は会って、拓夢さんのレッスンを受ける事になったのだ。

午前九時に、私の自宅近くの公園で拓夢さんと待ち合わせた。拓夢さんは、私の家まで迎えに行くと言ってくれたが、それは丁重にお断りした。家族に拓夢さんとの関係を訊かれても困るし、近所の人にもあまり見られたくなかった。

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