ヴァージンの不埒な欲望
拓夢さんは、クスッと笑って助手席のドアを開けてくれた。
「大丈夫!段々慣れるよ。どうぞ、お乗りください。お嬢様」
クッと口角を上げて、悪戯っぽく微笑む拓夢さん。私は頬に熱を持ちながら「おじゃまします」と、小さく答えるのがやっとだった。
運転席に乗り込み、車を発進させた拓夢さん。
「あっ、あの。これから、どこに行くんですか?」
ずっと気になっていた事を訊いた。
「そうだね。内緒!」
こちらにチラと視線を送りながら、やっぱり拓夢さんは悪戯っぽく笑った。
「っ!・・・」
その微笑みも流し目も、凶器ですから!無暗に繰り出さないでください。
私は右手で右胸を押さえ、そうっと息を吐いた。
「心配しないで。十分もあれば着くから」
どこに向かっているのかは教えてくれなかったが、目的地は近い所のようだ。
拓夢さんの車は、車内もやはりピカピカで、変に触れて私の指紋なんかを残してはいけない気がする。
とても座り心地のよいシートなのだが、私は背筋を伸ばしたまま座っていた。
そっと、隣の拓夢さんのきれいな横顔を見る。
あぁ、やっぱり、こんな時間が過ごせるだけでも幸せだと、膝に揃えた両手をキュッと握った。
*****
「星野さん、どうかしら?」
優しい笑みを浮かべた上野(うえの)さんが、鏡の中の私に語りかける。