ヴァージンの不埒な欲望

「上野さん、すごいです!」

鏡の中の自分を見て、ほぅっと息を吐いた。そして、鏡の中の上野さんを見つめながら、私は思わず声を上げた。

──あれから拓夢さんは、十分程車を走らせ市内のコインパーキングに車を止めた。そこから少し歩いた先にあったのが、『Myself』という人気のヘアサロンだった。

ただ、私が知っているのは二号店の方だ。『Myself second』は、三年くらい前に駅前通りにできたファッションビル『ミロワールビル』の中にある。

拓夢さんが働く『AKパートナーズ』も、ミロワールビルの中にある。

おしゃれな飲食店や洋服屋さんなどが入っていて、ローカル誌やローカル番組でたびたび紹介されている。

一階部分は緑も豊富で、ベンチやテーブルも比較的多く設置されている。ちょっとした遊具もあり、賑やかな街中に公園でもあるような感じだ。

ミロワールビルでは、小さな子どもを連れたお母さんや、お昼にはサラリーマンの姿もよく見かけるようだ。

ミロワールビルは、そんな感じでも。

『Myself second』は、私から見れば『流行の最先端』のような場所だ。そのキラキラした感じに、とても近付けない。

でも一号店になるであろうこちらの店は、住宅の多い駅裏にあり、外観もあまり目立つ感じではないけれど。


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