ヴァージンの不埒な欲望

私のお仕事スタイルは、ブルーの作業服の上下、マスク、使い捨てのキャップ。インナー(上)と靴下は、白と定められている。眼鏡までかけている私は、ほとんど顔が見えていない。

マスクをするので、当然メイクは落ちる。なので、メイクは日焼け止めクリームと色つきリップをするだけとなった。メイクとは、言えないね。

髪の毛も、キャップを被りやすいように弛くお団子でまとめる。ヘアサロンにも行かず、ただなんとなく伸びてしまった髪は腰近くまできていた。まとめるのも大変で、どうしようかと思っていたのだ。

私がメイクや髪型に手をかけていない事、拓夢さんは気付いたんだ。いや、そんなの一目瞭然だよ、ね。

思わず、自嘲の笑みが溢れた。

「星野さん、どうかされましたか?」

「あっ、いえ!何でもありません。よろしくお願いします!」

「はい!お任せください。それで、一つ提案というか、ご相談があるのですが」

今の私と、髪型・メイクを変えた後の私の写真を、お店のPR用に使わせてほしいという事だった。

「えっ!?」

予想もしていなかった上野さんの言葉に、私は慌てて両手と首を振った。

「むっ、無理ですっ!そんな、ぴっ、PR用の写真なんて!」

私を宥めるように、そっと上野さんが私の両手を握った。


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