ヴァージンの不埒な欲望

私は、その人から視線を落とした。キュッと下唇を噛みしめる。

「でも?」

その人の問いに促されるように、視線を上げてその人を見つめた。

「私の“心”は、どうなるのかなって……一応、女の子だから、少女マンガや小説のような恋に憧れる気持ちもありました。たくさんの恋をしなくても、ドラマチックなものでなくても。好きになって、見つめあって、キスをして。結婚は、私が恋をした人とがいい!そんな私の心は、どうなってしまうのかな、なんて」

どうしてここにいるのかを忘れたように、その人は真剣な顔で私の話を聞いてくれている。

何の縁も所縁もない、かなり強引なやり方でその人を捕まえた、こんな私なんかの話を。

誰もの目を引くその容姿だけでなく、その人は心も優しい人なのだと、私は確信した。

こんな私があなたに決めて、ごめんなさい。でも、どうか……どうか私の願いを、聞いてください!

右手で眼鏡のブリッジをクッと上げる。

「だから私、決めたんです!せめて初体験くらいは、自分が想いを寄せた人としようって。あれってかなり痛いって、友人から聞きました。今まで生きてきた中で、ダントツに一番痛かった。とても言葉で表現できるものじゃないって。そんな強烈な痛みには、好きな人とじゃないと、耐えられなかったって!」

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