ヴァージンの不埒な欲望
優しい時間

横山さんのお店を出て拓夢さんの車まで戻れば、ちょうどお昼の十二時になるところだった。

「愛美ちゃん、お昼ご飯を誘ってもいいかな?」

拓夢さんと、まだ一緒にいられるんだ!

「はい、喜んで!拓夢さん、今度こそ私に……」

「愛美ちゃん、ちょっと待って!愛美ちゃんの言いたい事はわかる。でも、今から行こうと思ってるお店は俺の知り合いの店だから、俺にカッコつけさせて。その代わり、愛美ちゃんにお願いがある」

「お願い、ですか?」

「うん。次に会う時には、愛美ちゃんの作ったお弁当が食べたい!」

「えっ!お弁当?」

全く予想していなかった拓夢さんのお願いに、思わず目を丸くした。お弁当って……本当にそんな物で、いいのだろうか?

小さく頷いた後、拓夢さんは続けた。普段の食事はどうしても、外食やコンビニのお弁当になりがちだ。そういう物が続くと、自分の為だけに作られた愛情たっぷりのお料理が、無性に恋しくなる、のだそうだ。

「愛美ちゃん、俺の為にお弁当、作ってくれるよね?」

「拓夢さんの為だけに、作ったお弁当……」

「そう!俺の為だけに」

「愛情、たっぷりで」

「愛情、たっぷりで!」

拓夢さんに探るような瞳を向けられ、私はコクコクと頷いた。

「やった!」

拓夢さんがくしゃりと笑い、私の顔は一気に熱を持つ。


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