ヴァージンの不埒な欲望
「とっ、特別、お料理が上手な訳ではありませんが、拓夢さんの為に、がん、ばります」
最後の方は口先だけで、ゴニョゴニョと言うだけになってしまったが、拓夢さんにはちゃんと伝わったようだ。
「ありがとう、愛美ちゃん。楽しみにしてる!」
はじけるような笑顔を拓夢さんに向けられ、ますます体温が上がる。とりあえず落ち着こうと、ゆっくり息を吐いた。
アレルギーや好き嫌いはありませんか?何かリクエストはありますか?と、自分を冷静にする為に拓夢さんに確認していく。
拓夢さんはアレルギーも好き嫌いもなくって、ほっとした。リクエストは、お弁当の定番おかず『卵焼き』。甘めでもしょっぱくてもいいから、私の味付けでいいそうだ。
そういえば、私のアレルギーや好き嫌いの有無は、拓夢さんと珈琲館で話した時にもう訊かれていたよね。
毎日自分でお弁当を作っている事も話したから、今日のお願いだったのかも。
拓夢さんの気遣いを感じながらも、あの嬉しそうな笑顔は本物だと思いたい。お弁当作り、がんばろう!私は心の中で、ギュッと拳を握った。
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「拓夢さん、ごちそうさまでした!とてもおいしかったです」
私は、改めて背筋を伸ばしてお礼を言い、向かい合って座っている拓夢さんに小さく頭を下げた。