化学反応検知中


健人はにこにこしながらマドンナに手を振る。

マドンナがそれに気づいてこちらを見た。


(もう駄目だ、)


昨日の日直でさえ、目が合うことはなかなかなかったと思う。

だから目が合った時に、瞳の黒さなんかを確かめてしまった訳で。


あんな馬鹿な妄想が、何かのきっかけになってしまったんだろう。

もう俺の気持ちはは引き返せないところまで来てしまった、らしい。


マドンナの真っ黒な瞳を見つめながら、俺は頭の中でそんなことを考えていた。


「あ、中田くん」


マドンナが黒髪を揺らしながら歩いてくる。


昨日までの俺だったら、近くで見れてラッキーとか、普通に思えてた。

その黒髪を触ってみたいとか、不謹慎なことを普通に考えられた。


でも今後、そう気軽に思える日は来るんだろうか。


「今空いてる席探してて」

「あ、そうなの?俺らもうすぐ食べ終わるよ」


な?って健人が皆に目配せをする。

……って、
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