化学反応検知中


そろり、そんな効果音がつきそうな動きで窓の外を覗く。

思わず隠れてしまったものの、堂々と鑑賞するのもおかしな話だ。

しゃがんだまま少し顔を出す俺の姿は、たいそうマヌケだろうけど。


靴の擦れる音がして、現れたのは


(金子先輩、)


この前健人が言ってた、マドンナに告白したという3年生だった。


「いや、全然待ってないです。大丈夫です」


笑顔で返事をするマドンナもたいしたものだ。



なんで俺は好きな人の告白シーンなんてのに出くわすんだ。

さっきのセリフなんかからして、マドンナは告白される側なんだろうけど。


…もし、だよ?もし。

本当はマドンナに好きな人なんかがいないのだとしたら?


「前にも言ったんだけど、俺と付き合ってくれない?有希子ちゃん」


この告白にイエスという可能性だってあるだろう。



この2週間、ずっとマドンナと話したかった。

話す内容なんて実際見つからないけど、ずっとその声に、話し掛けられたかった。
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