化学反応検知中


でも彼女は、その凛とした声を金子先輩に向けている。


ずっと話したかった彼女が目の前にいる。

なのに彼女は、告白されている。


「やっぱり俺、諦めらんないわ」


マドンナと対峙している金子先輩は校内でも有名な人だ。

自然に染められた茶色の髪に、ゆるくかけられたパーマ。

その甘いマスクは、クラスの女の子たちが騒いでるものだった。


そうだよ。そうだ。

彼女は、こんな世界にいる。

こんなにかっこいい人に告白される程の容姿を持っていて、俺なんかが想っててもいい人なんかじゃないのかもしれない。


「私…、」


人の告白現場を覗くなんて、とても良いこととは言えない。

それの相手が好きな人っていうのは、もっとダメな気がする。

でも俺は、目を瞑ることが出来なかった。

目を瞑ったら、それこそ何かに負ける気がしていた。



心臓が大きな音を立てているのが自分でも分かる。

目の前に彼女がいる感動とそして、彼女が誰かのものになってしまうかもしれないという不安と。


俺も好きだって心は叫んでいるのに、準備室から全く動けない俺は弱虫だ。

今すぐ彼女の元に駆けだしたら、何かが変わるかもしれないのに。

ここから2人を見つめ続ける俺にはきっと、彼女を好きでいる資格なんてない。
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