化学反応検知中
秋風が頬に刺さる。
なんで俺は、こんなところで、彼女を見つめるだけなんだろう。
彼女の黒髪が風に揺れている。
金子先輩との2ショットは嫌でも絵になる。
マドンナは、金子先輩の彼女になってしまうんだろうか。
俺がもやもやと考えを巡らしてるそんな時、
(っ、)
彼女が俺の方にちらっと目を向けた。
本当に一瞬。
たった一瞬だけだ。彼女が俺に目を向けたのは。
それなのに、俺の心臓は先程とは全く別物の鼓動を刻む。
体が熱くなる。参った。俺は相当彼女のことが好きらしい。
「ごめんなさい」
「ん?」
「金子先輩とは、付き合えません」
すっと、彼女の言葉が耳に入ってきて、俺には思わず長く息を吐いた。
マドンナが、金子先輩の彼女にはならない。
俺は本当にそう思って、心底安堵していたのに。(金子先輩には悪いが)