化学反応検知中
俺は彼女のそんな笑顔を見て、へたりこむかのようにその場にうずくまってしまったから、後のことは分からない。
でも、ぼーっとしていた俺の耳に届いたのは扉の開く音だった。
先生が来たと思ってゆっくり立ち上がった俺。
なのに、扉の前に立っていたのは先生じゃなかった。
『なにしてるの?』
俺の気持ちを上げたり下げたりする、例の女の子がそこには立っていた。
たぶん俺はすごく驚いた顔をしていたんだろう。
彼女が、俺の顔を見て小さく笑ったから。
『ほ、本棚の整理、頼まれて…』
『じゃあ、私も手伝うよ』
じゃ、じゃあ…?
前後の流れが全く掴めていない俺を無視して、彼女はさっさと本棚に向き合ってしまった。
――そんな彼女を見て俺ものっそりと本棚整理を始めてしまうあたり、俺は相当気が動転していたんだと思う。
何にって、そりゃもう。全てに、だ。
窓を開けたら彼女がいたことだって、俺には夢みたいな出来事だった。
そんな彼女が、金子先輩に告白されてる場面だって俺にとっては非現実だ。
それに合わせて、彼女の好きな人がいる発言ときた。
俺の頭はもう、キャパシティーオーバーだ。