化学反応検知中

そういえば、なんてことがある訳ない。

俺が普段、どれだけマドンナと話す機会を伺ってるかなんて自分が1番分かっている。

そしてそんな俺に、話し掛ける勇気がないのも分かっている。


マドンナは手を休めずに本棚と向き合っている。

こんなに近くに彼女がいて、言葉を交わすなんてことが夢のようだ。


彼女と話が出来ただけで俺は舞い上がって、彼女が告白されてただとか、好きな人がいるだとか、正直どうでもよくなってた。

彼女が俺の目の前にいるってだけで俺の心は嘘みたいに満たされてた。

やっぱり単純な人間だ、俺は。


俺も本棚と向き合いながらも、意識は常にマドンナの方に飛んでいた。

気になってしょうがない。

この浅井有希子という女の子が、気になってしょうがない。



「友達になろっか」


そんなことばかり考えていた俺だから、彼女の言葉にはしばらく反応できなかった。

というか、むしろこれも自らの妄想だと思って何も答えなかった。


「ねえ、友達になろうよ」


2度目の言葉に俺は思わずマドンナの方に視線を向ける。

マドンナは未だ本棚と向き合っていて、その表情は見えない。



「――…ん?」

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