化学反応検知中
友達の多い彼女だから、そういう風にいつも友達を増やしていくんだろうなって心のどこかで納得した。
あの、あの浅井有希子と友達になるっていうのは、俺の中では一生の内でも5本の指には入る一大事だったけど、彼女はきっとそういうことはないんだろう。
ただのクラスメイトと新たに友達になった。
本当に、それだけなんだろう。
俺はこの時の自分の感情に、正直驚いてた。
もっと、舞い上がっていいはずだ。もっと、喜んでもいいはずだ。
この時の俺は、そりゃあ嬉しかったし、少なからず気分は踊ったけど。
ほんとに、それだけだった。
彼女と友達になるっていうのは予想だにしていなかった出来事で、それが俺の感情にストップをかけたのも事実だった。
実感がなさすぎるんだ。
クラスのマドンナ、浅井有希子だぞ。
そんな女の子と友達になる?あり得ない。
俺の妄想ではないにしろ、友達になるってただそれだけのことですら現実ではないかのように思わせてしまう彼女。
友達って、名前だけの関係性なんだろうなって思ってたんだ。俺は。
例えば他のクラスに友達がいるとする。
その中で、廊下で擦れ違った時に言葉を交わすのは何人いる?
全員ってことはないだろう。
何人かは少し目が合うだけで、そのまま擦れ違うはずだ。
“友達”という名の、“知り合い”。