化学反応検知中

妄想してる時点で気付くべきだった。

これは違うんだって。

これは現実じゃないんだ、って。


馬鹿な俺は、そんなしょうもない妄想を現実と思い込みたかった。

高嶺の花であるマドンナとの出来事を、妄想で終わらせたくなかった。


だから午前中、彼女のことばかり見ていたんだと思う。

何か昨日と違うことがあれば、あのキスが現実のものだと思えるから。

でも、何も変わらなかった。2人の世界は変わることなく、交わらなかった。


今までのように、彼女は自分とは違う場所にいて。

他愛のない話をする関係ではない。むしろ、用事がない限り話す相手ではない。


俺はきっと、心の奥底にほんの小さな期待を持ってたんだろう。

あの出来事が自分の妄想の産物だって分かった瞬間に、悲しかったから。

現実であってほしいと、少なからず願っていた自分がいたから。


でもこんなの、彼女からしたら迷惑でしかない。

連絡事項を伝える為でしか話したことのないようなクラスメイトが自分で妄想してんだよ。

嫌に決まってる。気持ち悪いに決まってる。


正直、今は自己嫌悪しかない。

あんな馬鹿な妄想をしたこと自体、後悔し始めてる。


(日直一緒だからって舞い上がりすぎたんだな)


彼女に謝りたい気持ちでいっぱいだ。

会話する機会なんて実際俺にはないし、何を謝るんだって話だけど。
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