化学反応検知中


週明けの学校で、彼女は土曜日のことについて何も触れてこなかった。

というか彼女が俺に、話し掛けてくることはなかった。


彼女が休み時間に俺のところに来ることはなくなって、度々目が合うこともなくなって。

本当に、数か月前まで当たり前だったことが、いきなり戻ってきたようだった。


何も変わらない。

今までもこれが普通だったというように、変わらない日常だというように。

彼女と俺の世界が寸断された。


そして気付く。

今までいかに、彼女が俺に歩み寄ってきてくれていたかを。



俺は今までと何ら変わらない生活を送っている。

本当に何も変わらないんだ。そう、彼女と話さないってこと以外は。


彼女が、俺にわざわざ話し掛けてくれていたんだ。

俺は普段と同じように暮らしているのに、マドンナだけが俺の世界にはいない。

楽しみにしていたマドンナとの会話だけがない。


それが、俺が自分自身でいかに行動していないかを示していた。

ずっと俺は彼女が話し掛けてきてくれるのを待っていたんだ。

だから普段と同じ生活をしているにも関わらず、彼女だけがいない。

あの笑顔だけがない。



何度彼女の方を見やっても、映るのはその背中だけだった。

< 58 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop