化学反応検知中
週明けの学校で、彼女は土曜日のことについて何も触れてこなかった。
というか彼女が俺に、話し掛けてくることはなかった。
彼女が休み時間に俺のところに来ることはなくなって、度々目が合うこともなくなって。
本当に、数か月前まで当たり前だったことが、いきなり戻ってきたようだった。
何も変わらない。
今までもこれが普通だったというように、変わらない日常だというように。
彼女と俺の世界が寸断された。
そして気付く。
今までいかに、彼女が俺に歩み寄ってきてくれていたかを。
俺は今までと何ら変わらない生活を送っている。
本当に何も変わらないんだ。そう、彼女と話さないってこと以外は。
彼女が、俺にわざわざ話し掛けてくれていたんだ。
俺は普段と同じように暮らしているのに、マドンナだけが俺の世界にはいない。
楽しみにしていたマドンナとの会話だけがない。
それが、俺が自分自身でいかに行動していないかを示していた。
ずっと俺は彼女が話し掛けてきてくれるのを待っていたんだ。
だから普段と同じ生活をしているにも関わらず、彼女だけがいない。
あの笑顔だけがない。
何度彼女の方を見やっても、映るのはその背中だけだった。