化学反応検知中


「おーっと!マドンナ登場」


昨日のサッカー中継について語っていた健人が、出入り口の方向に目を向けて言う。

その声に、俺は無意識的に出入り口の方へ視線を向けていた。



クラスのマドンナ、浅井有希子。


漆黒の髪は、彼女が歩くたびにさらさらと揺れる。

胸元まで伸びた髪を払う姿は、男だけではなく女の子も釘づけになる。

少し切れ長の目は強い意志を携えているのに、彼女はそんな目尻にしわを寄せながら笑う。

口角の上がった唇から発せられる声はやや低め。

白い肌は、夏の日差しさえも跳ね返す。


彼女は、美人だ。


そのくせ飾りっ気のない性格で、男女問わず人気がある。

クラスのお姉さん的存在かと思えば(彼女は女子のクラス委員長である)、馬鹿なことをして皆を笑わせたりする。

勉強がよく出来て、体育の成績も悪くない。


2年3組の中心的存在。

みんなの人気者。


彼女はクラスの、マドンナだ。

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