化学反応検知中


もう辺りは薄暗くて、たとえ近くにいたとしても見つけられないかもしれない。

でもそんなの関係なかった。


人の波をかいくぐって彼女の行きそうな店を回る。

彼女の姿がなかったら次の店に行って、また違うところに行って。


心から思う。

俺は彼女のことを何も知らないんだって。

何色が好きだとか、どんなキャラクターが好きだとか、そんなこと一切知らない。


だから目星なんて付けても付いていないようで、ほとんど手当り次第に店を回る。


会いたいだけなんだ。

ただ、思いを伝えたいだけなんだ。

見つからないかもしれないなんて、今の俺には関係ない。

見つけるんだ、彼女を。

絶対に見つけてみせる。


何度も擦れ違う人と肩をぶつけた。

俺はその度に頭を下げて先に進む。

愛しい人を、必死に探す。




――やっぱり無謀だったんだ。


そんな言葉が頭を過(よ)ぎる。


当たり前と言えば当たり前かもしれない。

俺たちはどれだけ大きな場所に住んでるんだって、そう思う。

こんなに広大なこの土地で、しかもたくさんのもので溢れかえるこの繁華街で、


俺は、彼女を、


――見つけることができなかった。

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