化学反応検知中
擦れ違うサラリーマンと思いっきり肩がぶつかって睨まれる。
俺は小さく謝罪して、それでもなお足を引きずるように歩いていた。
自動改札に八つ当たりしたくなった俺の気持ちを、この場にいるどれ程の人が分かってくれるんだろうか。
(別にそんなのは求めていないけど、)
なんだかとても、泣きたくなった。
「……っこ、…」
え、?
俺は思わず辺りを見回した。
目に映るのは、人。人。人。
この時間の駅の構内は帰宅する人でごった返している。(この駅は特に)
今日俺はどれだけ女の子の声に反応しただろうか。
変な趣味とかがある訳ではない。
ただそれが彼女かもしれないと、その声のする方へ顔を向けてみた。
だけどそこには見たこともない人しかいなかった。
それの繰り返し。
たぶん今回もそうだろう。
声の主はどこにいるのかも分からず、俺は溜息をついた。
「…し、…」
だけど、もう一度その声が聞こえた気がした。
諦めきれずに辺りを見回す。
周りの人たちが立ち止まっている俺を見て迷惑そうに横を通り抜ける。
「、浅井さん」