化学反応検知中

「私はカレーにするー!!」

「じゃあ私は…、きつねうどんにしようかな」


(っ、)


どうかしてるんだ、俺は。

食堂で食べるメニューがかぶるなんてよくある話。

それだけのことにいちいち嬉しくなって動揺している俺は、昨日のあの妄想を引きづりすぎなんだ。


もう友人たちは別の話題で盛り上がってて、俺は1人置いてけぼり。


これはやばい。完全に、自分の気持ちがやばい方向に進んでる。



「私のも頼んどいてくれる?席、取ってくるから」


うどんをすすりながら横目で見ていた彼女が近づいてくる。

きょろきょろと、空いてる席を探してるようだ。


そんな姿さえ絵になってしまうマドンナを好きな人は、いったいどれくらいいるんだろう。



「おーっす!浅井ちゃーん!!」


(…もう嫌だ、この子)


俺は半分泣きそうになりながら、声を上げた健人を睨む。

当の本人は、複雑な感情を持つ俺には全く気付いていない。


自己嫌悪でいっぱいの俺に、少しは配慮してくれたっていいだろう。

まあ、何も知らない健人を責める資格は俺にはない。
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