明日の蒼の空
「悪いことをするような人は、この世界に上がって来られないから安心して。もし仮に、りさちゃんのお父さんが、この世界に上がって来たとしても、あたしと蒼衣お姉ちゃんが体を張って、りさちゃんを守るから」
 力強い声で言った夏美さんの表情からは、どんなことがあっても絶対にりさちゃんを守るという決意が伺える。

「う、うん」
 りさちゃんは顔を上げて、小さく頷いた。

 夏美さんはそれ以上何も言わず、にっこりと微笑んだ。

 私は席を立ち、りさちゃんにハンカチを手渡した。

 夏美さんの笑顔に安心したのか、りさちゃんは泣き止んだ。

「あたしには、夏美おばちゃんと蒼衣お姉ちゃんがいるから大丈夫」
 自分に言い聞かせるように言って、いつもの笑顔を振りまいてくれた。

 夏美さんは安堵の表情を浮かべている。もちろん、私も安心した。

 りさちゃんは本当に心の強い子だと思う。きっと、いくつもの修羅場を経験してきたに違いない。

「その赤い毛糸の帽子は、誰かにもらったの?」
 前々からずっと気になっていたこと。私もりさちゃんに質問してみた。

「お母さんが作ってくれたんだよ」
 りさちゃんは笑顔のまま、明るい声で答えてくれた。

 お父さんは嫌いだけど、お母さんは大好き。りさちゃんの表情からは、そのようなことが読み取れる。
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