明日の蒼の空
 我が子の存在に気づけないままのちひろさんは、すーすーと寝息を立て始めた。

 お母さん、あんまり無理しちゃダメだよ。疲れたら、休むんだよ。ちゃんとご飯を食べるんだよ。

 お母さん思いの優しい子。りさちゃんは名残惜しそうにしながら、お母さんの体から降りて寝室から出た。

 夏美さんと私は、寝室で眠っているちひろさんに頭を下げて、りさちゃんの小さな手を握り締めた。

 夏美さんと私は、りさちゃんの温もりを肌で感じられるのに、ちひろさんは感じることができない。本当に残念で悲しいことだと思う。

 地上の世界には、いつでも降りられること。お母さんに逢いたくなったときは、あたしか蒼衣お姉ちゃんに必ず言うこと。この二つのことを、夏美さんがりさちゃんに言って聞かせた。

 りさちゃんはお母さんの方に振り向き、寂しげな表情のまま、小さく頷いた。
 
 お母さん、また逢いに来るからね。

 りさちゃんがお母さんに向かって手を振った。

 夏美さんと私は、今一度、ちひろさんに頭を下げて、三人で家に戻った。
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