明日の蒼の空
 今日は、りさちゃんの入園日。

 夏美さんと私は仕事を休み、りさちゃんを連れて、東ひまわりこども園に向かった。

 園長先生と担任の先生に案内され、新入生のりさちゃんと保護者の夏美さんと私は、年少組の、おれんじひまわり組の教室に入った。

 りさちゃんは教室の前に立ち、夏美さんと私は教室の後ろに立った。

 大勢の元気な園児たちを目の前にして、りさちゃんはちょっと緊張している様子。

「それでは、おれんじひまわり組のみんなに、自己紹介をしてください」

「はい」
 りさちゃんは落ち着いた声で返事をして、大きく深呼吸をした。

「こんにちは。初めまして。あたしの名前は、南りさです。三週間くらい前に東ひまわり町に来ました。今日からお世話になります。よろしくお願いします。あたしには、お母さんが三人もいます。地上の世界で暮らしている、ちひろお母さんと、教室の後ろに立っている、夏美お母さんと蒼衣お母さんです」

 りさちゃんの自己紹介が終わったと同時に、おれんじひまわり組の園児たちが一斉に夏美さんと私の方に振り向いた。

 すごく恥ずかしかったけど、すごく嬉しかった。

 りさちゃんが夏美さんと私のことを、お母さんと呼んでくれたのは初めてだったから。

 夏美さんも嬉しさを抑えきれない様子で、りさちゃんに向かって手を振った。

「りさ!」
 夏美さんがものすごく大きな声で叫んだ。

 りさちゃんじゃなくて、りさ。確かにそう聞こえた。

「りさ!」
 私も大声で叫び、りさに向かって手を振った。

 りさはにこにこと微笑みながら、夏美さんと私に手を振り返してくれて、新しいお友達の輪の中に飛び込んでいった。

 体育座りをして、担任の先生のお話に耳を傾けているりさは、ちひろさんと夏美さんと私の大切な娘。かけがえのない大切な娘。ちひろさんがこの世界に上がって来る日まで、りさをしっかり育てる。精一杯の愛情を降り注ぐ。
< 153 / 315 >

この作品をシェア

pagetop