明日の蒼の空
 伝えられないけど伝える。りさの第二のお母さんになった夏美さんと私の使命の一つ。

 りさが授業を受けている間に、夏美さんと私との二人で地上の世界に降りた。

 ちひろさんは……実家に戻っていた。

 部屋のベッドに座って編み物をしている。

 コタツの上には、りさの写真が入った写真立てとどうぶつビスケット。

 この間の時より、顔色は良いように見える。

 夏美さんが編み物をしているちひろさんの前に立ち、りさがこども園に入って元気に学んでいることを報告した。

 ちひろさんは黙々と編み物を続けた。

 夏美さんと私は、ちひろさんに頭を下げて、おれんじひまわり組の教室に戻った。



 ジングルベル♪ ジングルベル♪ 鈴が鳴る♪

 早くも馴染んだ様子。りさは新しいお友達と一緒にジングルベルの歌を歌っている。どの子も楽しそうに歌っている。

 夏美さんと私も、子供たちのメロディーに合わせて、ジングルベルの歌を歌った。

「それでは、もう一度、歌いましょう」
 先生の合図により、おれんじひまわり組の園児たちが一斉に歌い始めた。

 親ばかと言われても構わない。私の耳で聴いた限りでは、りさの歌声がいちばん大きくて上手。

 私はカメラを構えて、楽しそうにジングルベルの歌を歌い続けているりさの姿を写真に収めた。

 今のりさの姿を見たら、ちひろさんはどれだけ喜ぶだろう。ちひろさんにりさの写真を送れないことが本当に残念でならない。

 もうすぐクリスマスだけど、最愛の娘さんを失ったちひろさんの気持ちを考慮して、クリスマスは自粛しようということになった。

 普段どおりに食事をするだけでは味気ないので、りさにクリスマスプレゼントを贈ろうということになった。

 夏美さんは絵本を二十冊。私は悩んだ挙句、クリスマスイブの午後、空のキャンバスにりさとちひろさんの似顔絵を描くことに決めた。
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