明日の蒼の空
 この日のちひろさんは、部屋のベッドに座って、電話で誰かと話している。

 表情はいつになく明るくて、声には張りがあり、時折、うんうん。と言って、頷いたりしている。

 会話の内容から察すると、ちひろさんの電話相手はどうやら高校時代の同級生のよう。

 相手の顔は見えないし、声も聞こえないので、ちひろさんの電話相手が、女性なのか、男性なのかはわからない。

「じゃあ、来週の金曜日の七時にね。今夜は本当にありがとう。おやすみなさい」
 ちひろさんはそう言うと、電話を切って、勢いよくベッドから立ち上がった。

 部屋のクローゼットを開けて、キャメル色のダウンコートとクリーム色のロングスカートを取り出して、姿見の前に立った。

 コーディネートをしているちひろさんは、ずっと笑顔のまま。どの服にしようか悩んでいる様子。

 お母さんの笑顔を見たりさが、とっても嬉しそうな顔をしている。

 ちひろさんが誰かと会う約束をしたのはわかった。待ち合わせ時間が朝の七時なのか、夜の七時なのかはわからなかった。

 夏美さんが夜の七時なんじゃないかな。と言った。私もそうだと思った。金曜日は平日だし、まだ一月の中旬。寒い中で、そんな朝早くから出かけないと思ったから。

 念のために確認。金曜日の朝、私はいつもより早起きをして、一人だけで地上の世界に降りた。

 ちひろさんはベッドで眠っていた。

 熟睡しているようで、起きそうな気配はない。

 待ち合わせ時間が、夜の七時であることがわかり、私は家に戻った。
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