明日の蒼の空
「ちょっと休憩しようか」

「うん」

 ちひろさんとだいすけさんは再びベンチに座った。

 私はベンチの後ろ側に立ち、二人の会話に耳を傾けた。

「どのアトラクションも空いててよかったね」

「そうね。遊園地で遊んだのは、私は三年振りくらいかな。りさがまだ一歳の頃ね」

「その頃は、上手くいっていたんだね」

「うん。短い間だったけどね」小さな声で言ったちひろさんは頭を上げた。「りさと一緒に来られたらいいのにな」

 上手くいっていた時期もある。どこでどう歯車が狂ってしまったのかはわからない。ちひろさんが、りさを大切に思っていることはわかる。
 
 りささんは、遊園地に来ていますよ。夏美さんと一緒にジェットコースターに乗っています。お化け屋敷にも入りましたよ。楽しく遊んでいますよ。すごく元気ですよ。

 私の声は……やっぱり届かなかった。

 伝えたいのに伝えられないもどかしさ。本当に辛いことだと改めて思った。
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