明日の蒼の空
 人は一人では生けていけない。という言葉がある。ちひろさんの様子を見守っていて、まさにそのとおりだと思った。

 極端な言い方をすれば、一人で生きていくといことは、誰のお世話にもならず、誰とも会わず、誰とも話さず、本も読まず、映画も観ず、音楽も聴かず、居酒屋さんにも遊園地にも行かず、食べる物は自分で作り、水も自分で調達して、自分の力だけで生きていくということ。

 そんな孤独に耐えられる人なんているのだろうか。私はいないと思う。

 人は皆、誰かに支えられて生きている。誰かに元気をもらっている。直接的でなくても間接的に。

 ちひろさんは、だいすけさんから元気をもらい、だいすけさんは、ちひろさんから元気をもらっている。

 私は、夏美さんとりさから元気をもらい、他の多くの人たちからも元気をもらっている。だから、私は生きていける。

 お母さんの背中に抱きついたりさは、これからどんどん成長していき、やがて誰かを好きになる。

 恋愛というものを経験して、いずれは結婚して、子供を産んで母親になる。

 そうなったとき、りさは今のお母さんの気持ちをもっと理解できるようになると思う。

 ちひろさんが、大人になったりさを見たとき、どれだけ驚くだろう。その日は必ず訪れると、私は信じている。

 ちひろさんは、だいすけさんと結婚して、新たな家庭を築き、末永く末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし、めでたし。

 そうなることを、私は心から願う。これからも、ちひろさんの様子を見守り、夏美さんとりさと一緒に、影ながら、応援していこうと思う。
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