明日の蒼の空

　新郎の友人、新婦の友人、新郎のお父様、和馬さん、の順にスピーチが行われ、姉が席から立ち上がった。

「本日は、お忙しい中、私たちの結婚披露宴にご出席頂きまして、誠にありがとうございました。ささやかな披露宴ではありましたが、心温まるひと時を送れましたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。皆様から頂きました数々の温かいお言葉を胸に刻み、二人で力を合わせて、明るく楽しい家庭を築いていきたいと考えております。これからも、どうぞよろしくお願い致します」
　姉は頭を下げた。

　顔を上げて、立ち上がったまま、グラスのお水を一気に飲み干した。

「私には妹がいました。この世界でたった一人だけの、かけがえのない妹です。名前は、蒼衣といいます。とても残念で悲しいことに、昨年の秋に交通事故で亡くなりました。二十一歳の若さでした。これからという時だっただけに、本当に残念でなりません。妹を失ってからというもの、私は泣いてばかりいました。食事も喉を通らず、眠れない日々が続きました。当たり前のことが当たり前でなくなる怖さを知りました。もっと何かしてあげられることがあったのではないかと、後悔の念に押し潰されそうになりました。和馬や友人をはじめとして、多くの方々の支えにより、私は笑顔を取り戻すことができました。この日を無事に迎えることができました。この場をお借りして、感謝申し上げます」
　姉は再び頭を下げた。

　顔を上げて、立ち上がったまま、大きく息を吸い込んだ。