明日の蒼の空
「旦那様は、どうされているんですか?」

「菓絵を捜しに、地上の世界に降りているのよ。早く見つかればいいんだけども……」
 沈痛な表情で答えてくれた菓絵さんの祖母さんは、大切な孫娘の突然の失踪に、いてもたってもいられない様子。

 沈痛な表情のまま、ずっと溜め息を吐き続けている。

 私はどんな言葉を掛けていいのか悩み、菓絵さんは、必ず戻ってくると思います。信じて待ちましょう。とだけ声を掛けた。

 空を見上げながら、東ひまわりこども園に向かって歩いている途中で、私は二つのことに気がついた。

 一つ目は、真っ白い雲のキャンバスに描かれていた麦わら帽子姿の男性の肖像画は、菓絵さんの彼氏さんだったこと。

 二つ目は、菓絵さんは、真っ白い雲のキャンバスに彼氏さんの肖像画を描いた直後に、地上の世界に降りたということ。

 空のキャンバスに絵を描くと、息を吹きかけて消さない限り消えることはない。

 雲のキャンバスに絵を描くと、雲が消えるとともに絵も消える。

 だから、菓絵さんは、雲のキャンバスに描いたのだと思う。

 菓絵さんがなぜ、置き手紙を残して、地上の世界に降りたのか。その理由は、私にはわからない。
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