明日の蒼の空
 菓絵さんの失踪は、瞬く間に町中に知れ渡った。

 どこに行っても菓絵さんの話題で持ちきり。

 大型のリュックを背負って、菓絵さんを捜す旅に出る人まで現れた。

 夏美さんも私も誰にも話していない。りさは何も知らない。どこから情報が漏れたのかはわからない。



 みんなのふっちゃんには、連日、多くの人が押し寄せていて、菓絵さんの祖父母さんは対応に追われている。とても営業できる状態ではない。

「菓絵おばちゃんは、どこに行っちゃったの?」
 たあくんが泣きそうな声で質問している。

「菓絵さんは! どこにいるんですか!」

「知ってるんでしょ!」

「居場所を教えてくださいよ!」

「前からおかしいと思っていたんですよ!」

「何か知っていることがあれば、どんなことでもいいので教えてください」

「僕たちが捜しに行きますから」

 みんな、興奮している。みんな、心配している。

「皆さん、どうか落ち着いてください。菓絵は、必ず戻ってくると言っていました。菓絵の言葉を信じてあげてください」

 絶対に誰にも口外しないと夏美さんと約束した。

 大変な目に遭っているからといって、菓絵さんの祖父母さんに、究極の方法のことを話すわけにはいかない。

 夏美さんの推測が正しければ、菓絵さんは、地上の世界で暮している誰かに生まれ変わっている。この世界のどこを捜しても、菓絵さんは見つからない。
< 208 / 315 >

この作品をシェア

pagetop