明日の蒼の空
 お絵描き教室初日、火曜日の夜。

 今夜は早めに夕食を済ませて、家族三人でみんなのふっちゃんに向かった。

 菓絵さんの祖父母さんに案内されて、私と夏美さんとりさは、リビングに通された。

 かなり広々としていて、八人くらいで囲める丸テーブルの上に、いろんな種類の駄菓子が置かれていて、飲み物もたくさん置かれている。

「好きなように食べて飲んでいいからね」
 菓絵さんの祖母さんが言ってくれた。

「それでは、遠慮なくいただきます」
 せっかくのご好意なので、私は五円チョコとコーヒー牛乳をいただいた。

 りさはどうぶつビスケットを食べ始めて、夏美さんはコーラを飲み始めた。

 リビングで寛がせてもらっていたところ、玄関の方から足音が聞こえてきて、お絵描き教室の子供たちが続々と集まってきた。

 今日の生徒は九名。男の子が二人、女の子が七人。

 菓絵さんの祖母さんが、私と夏美さんとりさを、お絵描き教室の子供たちに紹介してくれた。

「今日から、蒼衣お姉さんが、みんなの先生です。蒼衣先生の言うことをよく聞いてくださいね」

「はーい!」
 大きな声で返事をしたお絵描き教室の子供たちに、私、夏美さん、りさの順で自己紹介をした。

 どの子も笑顔で拍手を送ってくれた。

 私は少し安心した。

「描きたい絵を、好きなように描いてください」

「はーい!」
 お絵描き教室の子供たちは、絨毯の上にスケッチブックを広げて、鉛筆や色鉛筆を握り締めた。

 菓絵おばちゃんは、どこに行っちゃったのかなあ。

 早く戻ってきてほしいよね。

 すごく寂しいね。

 ちゃんとご飯を食べてるのかな。

 元気だといいね

 すごく心配だね。

 菓絵おばちゃんの笑顔が見たいなあ。

 どの子も菓絵さんのことを話をしている。どの子も菓絵さんの似顔絵を描いている。どの子も菓絵さんの帰りを心待ちにしている。

 私は居た堪れなくなって、両手で耳を塞いでしまった。

 リビングから出て、暗い店内の椅子に座った。

「蒼衣の気持ちはわかるけど、お絵描き教室の先生になったんだから、頑張って指導しなくちゃ」
 夏美さんに言われて、私はリビングに戻った。
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